謎のおじさん
こんにちは。凛奈(life_rinna0)です。
この物語は、謎のおじさんが病んでる人に向かってひたすら持論を語っていくお話しです。
謎のおじさんはやっぱり謎なので、住所不明、職業不明。
分かるのはそれなりのおじさんである事。
口が悪くてなんだか偉そう。けど、なんか色々世の中見てきたっぽい人。
そんなおじさんがある一人のリストカットを繰り返す少女にひたすら語りかけるお話しです。
ep.1 自分は自分で救え
お前さん、随分傷だらけだね。
その腕の傷もそうだが、心の中はもっと傷だらけだろうな。
どうして自分は救われないのか?
それはお前さんが完璧な人に完璧に救われようとしているからだよ。
昔から病む人間ってぇのは完璧主義者ってぇのが多くてな。
そういう人間は病めば病む程、更に完璧に拘っていくんだ。
それは自分に対してだけじゃねぇ、自分と関わる全ての人間に対しても。
つまり人を選んでる訳だ。
本当は今すぐにでも誰かに助けて欲しいが、もう傷付きたくないから出来れば優しい人に助けてもらいたい。
だから人の良さそうな人を見つけて、どうか助けて下さいと縋ってみる。
運良くそいつが助けてくれたとして、礼はいらねぇよ、なんていう善人がただで転がってると思うか?
この御恩は一生忘れませんで済むと思うか?
その服剥ぎちぎられて体中舐め回されるだけじゃすまねぇぞ。
ただの善人が助けてくれる可能性なんて宝くじなんかに当たる可能性より低いと思え。
言葉できれい事を並べられるより、金が欲しいみてぇだが、それこそキレイ事だ。
一瞬でもいいから夢を見させてくれなんてやめとけ。
自分で動かねぇで一瞬の夢なんて見ちまったら地獄の始まりだ。
その一瞬に一生縋って生きてく事になる。
いいか、現実から目を逸らしたい時こそ、現実を見ろ。
理想に答えはない。
現実から理想に近づく為の答えを見つけ出すんだ。
なぁ、今、その足は動かせるか?
目も鼻も耳も口も自分の意志で動かせるっつうなら十分、上物だ。
腕はだいぶ傷だらけみてぇだが、その手でしっかり持ってるモノがあるって事は、まだ大丈夫だな。
そのスマホってヤツは何でも調べられるって言うじゃないか。
そいつで調べる事は、自分を助けてくれる人間を探し出す事じゃない。
自分を救う為に今の自分に出来る事を探し出すんだ。
他人に救われようとしてる限り、自分はいつまで経っても救われねぇんだよ。
どんな風に救われたいのか、お前さんが一番よく知ってんだろ?
誰も助けてくれないなら自分で救うまでだ。
自分に出来る訳がないだのとやかく言ってねぇでとっとと始めてみな。
本気で「終わり」を終わらせたいなら始めるしかねぇんだよ。
ep.2 自分の線を描いていけ。
お前さん、まだ迷ってんのかい?
何もずっと一人で頑張れって言ってんじゃねぇよ。
ただで救われようとすんなって話で、お前さんが歩き出しさえすれば、途中で人に道を尋ねたっていい。
自分の視野には限界ってぇのがあるが、他人の目線が加わる事で視界は更に広がっていく。
もちろん、その中には悪いヤツらも含まれてるだろうから、時には痛い目に遭う事もあるさ。
だが、目先の欲望に囚われて大きな賭けにでも出ない限り、大概は擦り傷だ。
深い傷だって、どん底から這い上がった人間にはそれだけの強さがある。
ただじゃ死なねぇんだよ。
それにな、歩き始めた人間には、そいつを見守ってくれる人間ってぇのが必ず現れる。
歩き始めた人間ってぇのは、歩き方を覚えたばっかりのガキと一緒。
おぼつかない足取りでフラフラしてっから見てる人間は気になってしゃーないんだよ。
それでもなんとか歩こうとしてるんだ。
思わず手を差し伸べたくなるし、上手く歩けるようになってほしいって心から見守りたくなるんだよ。
なぁ、今までお前さんを助けてくれなかったヤツらは、全員お前さんを見捨ててると思うか?
どんなに順風満帆に見える人間だって、何かしら抱えてる荷物がある。
殆どの人間は、自分の荷物で手一杯だ。
心の中では手を差し伸べたくても、
その両手は埋まってんだ。
そいつらはそいつらで、助けたくても助けられなかった辛さってぇので傷ついてんだよ。
お前さんは誰も気にもとめてくれないと思うかもしれないが、お前さんが「救われてほしい」と願ってるヤツはお前さんが思っている以上に多い。
少なくても俺はその一人だ。
いつまでも何も変わらないのは、いつまでも同じ場合で同じ事を繰り返しているから。
そこから抜け出したいと思ったからここへきたんだろ?
ともかく知らない道を歩いてみな。
色んな場所に行って色んな人に道を聞いて、
どんどん自分の線を繋いでいくんだ。
同じ場所でぐるぐると渦を描いていただけの線が、どんどん面白い模様に変わっていくのを感じるはずさ。
ここまでずっと頑張ってきたんだろ。
一人じゃ生きられねぇ世界で、ずっと一人のまんま、傷だらけの自分に傷を付ける事で生きのびてきたなんて、大したもんじゃねぇーか。
お前さんだから、ここまで生きて来れたんだ。お前さんだからこれからも生きていけるんだ。
どんなに腕に傷を付けても、決して命の線だけは切るな。繋いでいくんだ。
大丈夫だ、お前さんの行動一つ一つが必ず繋がっていく。
お前さんは、お前さんの線を描いていけばいい。
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