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happiness
城の中で守られていた姫は
事実を知りはしないの
窓の外から聞こえる
人々の叫び声は宴の証だと
ずっと王子が迎えにこないのは
城に向かう途中に不慮の事故に遭い
還らぬ人になったのだと
この城の壁が妙に柔らかい事も
シェフの作る美味しいディナーが
少しだけ生臭い事も
シャワーの水を浴びてると
なんだか悲しくなる事も
知らないの私は何も知らないの
今日もみんなが優しくって
今日もディナーが美味しかったわ
ベットの中はふかふかで気持ちいい
目を閉じて今日という一日に感謝するの
きっと明日も私は幸せ
城の中で守られていた姫は
事実を知りたくないの
知る必要なんてない
だって今が楽しいのなら
余計な情報はいらない
だから自分の目にフォークを刺して
自分の耳をナイフで切り落としたの
この城の中は私が好きなモノだけ
シェフの作る美味しいディナーに
吐き気がするなら
シャワーの水を浴びるほど
悲しくなってしまうだけなら
要らないの私は何も要らないの
もう優しくないみんなも
もう美味しくないディナーも
ベッドの中だけは気持ちがいいから
目を閉じて今日という一日を忘れればいい
きっと明日はとても幸せ
知っているの私は全部知っているの
この城は哀れな城だって
城の外の宴はとても無様な儀式で
始めから王子なんて存在しなくて
そもそも全てが偽りでしかない事も
だけど
知らないの私は何も知らないの
もうみんなはいないけれど
今日のディナーは最高だわ
湿った床が冷たくて気持ちいい
目を閉じて今日という一日に感謝するの
きっと明日も私はとても幸せ
ずっとずっと私は幸せ
epilogue
一度幸せを感じると
それがずっと続けばいいと思う。
幼い頃、楽しかった今日があれば、明日も楽しい明日であるようにと願っていた。
でも、私が明日に願いを掛けると、
大概、翌日は嫌な事が起きて
そのまま嫌な事が続いていった。
幸せは続かないのに嫌な事は続く。
一瞬の幸せは不幸の為にあるかもしれない。
そう思ったら今日が幸せでも、
明日も幸せであるようにとは願わなくなった。
代わりに明日が来ないように願った。
幸せは幸せのまま終わればいい。
幸せを汚す必要がどこにあるのか。
幸せを汚さず、真っ白のまま
幸せを幸せだと信じたかった。
-rinna-
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